今回のテーマは、アニメ『呪術廻戦』の「死滅回游」編です。
この記事では、動画で語られた虎杖悠仁の「部品」発言の哲学的な意味について触れつつ、動画内では時間の都合で語り尽くせなかった哲学者トマス・ホッブズの波乱に満ちた生涯について、詳しく掘り下げていきます。
今回は、制作した自分自身もとても勉強になった政治哲学です。
国家に対しての見方が変わり、視野が少し広がった気がします。
ぜひこの記事と動画を合わせてご覧ください。
虎杖の「部品」発言は哲学的に大正解な理由。ホッブズが語る「五条悟とリヴァイアサン」
なぜ虎杖悠仁は「英雄になりたい」ではなく「部品になりたい」と言ったのでしょうか?
今回公開した動画では、17世紀イングランドの哲学者トマス・ホッブズの思想を通して、死滅回游という「自然状態」と、虎杖たちが目指す新しい秩序の正体を解き明かしました。
1. 海外が震えた!死滅回游という「地獄」
『呪術廻戦』の死滅回游編は、宿儺の器である虎杖悠仁を中心に、呪術師たちが否応なく巻き込まれる壮絶なサバイバルゲームです。
誰も同意していないのに突然始まり、羂索が一方的に決めたルールの中で、人々は戦わされます。
この理不尽な構造に対して、海外の掲示板Redditでは様々な考察の声が上がっています。
死滅回游という設定に対して、海外ファンはどう反応したのでしょうか?

「歯車」になることでしか自分を保てなくなってるの、切ないけどちょっと感動するよね。世界のためって言っても、もう自分には何も残ってないし、自分の価値も見いだせてないんだろうな。

五条の本当の目的は、呪術界を中から変えることなんだよね。そのために呪術高で若い世代を育てて、いつか保守派を追い出して自分が望む文化を作ってほしいって思ってる。上層部を殺しても一時的な効果しかないし、自分がいなくなった後に続かない。だからこそ、長く続く文化の変化を根付かせようとしてるんだ。

会社に洗脳されて以来、歯車でいることにこんな誇り持ったことなかったわ。悠仁、歯車魂をガチで体現してる。
虎杖の「部品になりたい」という言葉は、海外ファンの心にも深く刺さっていました。英雄願望ではなく、自ら歯車になろうとするその姿勢に、多くのファンが感動しているのです。引用元
2. ホッブズ先生の哲学講座:自然状態と社会契約
動画の中では、ピヨ太郎ともちもちの元に、特別講師としてトマス・ホッブズ先生が登場します。彼は死滅回游を、自身の哲学である「自然状態」の最もわかりやすい実例だと語ります。
※哲学者のセリフは、史実や著書の内容を参考にしつつ、アニメの考察に合わせて独自に構成したフィクションが含まれます。
学術的な正確性を保証するものではありませんので、一つの考え方としてお楽しみください。

死滅回游は私が『リヴァイアサン』で書いた「自然状態」そのものでね。見過ごせなかった。
法も秩序もない状態では、人間は「万人の万人に対する闘争」を繰り広げる。要するに、全員が全員の敵になる。

でもさ、呪術界にはルールがあったよね。呪術高専とか、上層部とか。

あったな。過去形だ。羂索が渋谷事変で既存の秩序を壊した瞬間、呪術界は自然状態に戻った。
そして今度は死滅回游という新しいルールを一方的に押し付けた。
誰も同意していないルールは、ルールではなく暴力だ。

じゃあ虎杖たちは、暴君を倒そうとしてるんだね。

そうだ。だが問題がある。暴君を倒した後、誰が新しい秩序を作るのか。
誰も作らなければ、また自然状態に戻る。
だから虎杖たちは戦うだけでなく、新しい秩序を作る準備もしなければならない。
自然状態とリヴァイアサン
ホッブズ哲学の根幹にあるのが「自然状態」と「社会契約」という概念です。
法も秩序もない「自然状態」では、人間は生存のために互いに争い続けます。ホッブズはこれを「孤独で、貧しく、不潔で、残忍で、短い」と表現しました。死滅回游はまさにこの状態です。
そこから抜け出すために人々は「社会契約」を結び、自分たちの権利の一部を強大な権力=「リヴァイアサン」に譲渡することで、秩序と安全を手に入れます。呪術高専や上層部はかつてそのリヴァイアサンでしたが、腐敗していました。
そして五条悟という存在は、呪術界における「恐怖による抑止力」そのものでした。彼が封印された瞬間、その均衡が崩れたのです。
ホッブズ先生と虎杖の「部品」発言の関係、そして「真の秩序とは何か」についての詳しい解説は、ぜひ動画本編でお楽しみください!
虎杖の「部品」発言を動画でチェック!
ホッブズ先生による熱い哲学講義と、ピヨ太郎&もちもちの掛け合いはYouTubeでご覧いただけます。
3. 哲学者トマス・ホッブズの生涯
ここからは、動画の解説役として登場した哲学者トマス・ホッブズ自身が、どのような人生を歩んだのかを詳しくご紹介します。彼の人生そのものが、戦争と恐怖の中で生まれた思想の産物でした。
3-1. 生い立ちと幼少期
1588年4月5日、トマス・ホッブズはイングランドのウィルトシャー州マルムズベリー近郊のウェストポートで生まれました。その年はスペイン無敵艦隊の脅威がヨーロッパ中に広まっていた時代であり、ホッブズ自身が後に「母は恐怖と私を双子として産んだ」と語ったほど、彼の誕生は時代の不安と共にありました。
父は地方の副牧師でしたが、教会の前での喧嘩の後に失踪してしまい、ホッブズは幼くして父を失います。その後、裕福な叔父フランシスに引き取られ、教育を受けることができました。幼少期から非常に優秀で、14〜15歳でオックスフォード大学のモードリン・ホール(現ハートフォード・カレッジ)に入学しています。
3-2. 家庭教師として歩んだ青年期
大学卒業後、ホッブズはキャヴェンディッシュ家(後のデヴォンシャー伯爵家)の家庭教師となります。この貴族との関係は生涯にわたって続き、彼の知的活動を支える経済的な基盤となりました。
家庭教師として若い貴族と共にヨーロッパ大陸を旅したことも、彼の思想形成に大きな影響を与えました。1636年頃のイタリア旅行ではガリレオ・ガリレイと直接面会し、フランスではルネ・デカルトと書簡などを通じて交流しています。当時の最先端の科学的・哲学的思想に触れたことで、ホッブズは「人間や社会も、物理法則と同じように分析できるはずだ」という機械論的な世界観を育てていきました。
3-3. 思想の形成と内戦体験
『リヴァイアサン』の誕生
ホッブズの思想を決定的に形成したのは、イングランド内戦(1642〜1651年)の体験です。国王派と議会派が激しく争い、1649年には国王チャールズ1世が処刑されるという前代未聞の事態を目の当たりにしたホッブズは、「なぜ人間は争うのか」「どうすれば平和な社会を作れるのか」という問いに真剣に向き合いました。
内戦を避けてフランス・パリに亡命していた1651年、彼は主著『リヴァイアサン』を著します。この書の中で彼は、法と秩序のない「自然状態」では人間は互いに争い続けるという理論を展開し、だからこそ人々は社会契約によって強大な国家権力(リヴァイアサン)を作る必要があると主張しました。
王権神授説への挑戦
当時の王の権力の根拠は「王権神授説」、つまり「王の権力は神から直接授けられたものだ」という考え方でした。しかしホッブズは、「王の権力の正当性は神からではなく、人々が社会契約によって権力を譲渡したからだ」と唱えました。権力の源泉を神から人間に移したこと、これがホッブズの革新的なところでした。
結果として王政を擁護する形にはなりましたが、その理論は後のジョン・ロックやジャン=ジャック・ルソーの「人民主権」の思想へとつながっていきます。
3-4. 論争と迫害の日々
『リヴァイアサン』は発表と同時に大きな論争を巻き起こしました。教会の権威を国家権力の下に置くという主張は、聖職者たちの激しい反発を招きます。また、亡命先のフランスでも王党派から危険視され、ホッブズはイングランドへ帰国せざるを得なくなりました。
帰国後も彼の著作は無神論的だとして批判され続けました。1666年のロンドン大火の後には、議会で「不敬虔な書物がこの災害を招いた」として『リヴァイアサン』が槍玉に挙げられ、ホッブズは異端審問にかけられる危機にさらされます。晩年まで批判と論争にさらされ続けた彼の人生は、まさに「自然状態」の恐ろしさを身をもって知る日々でもありました。
3-5. 晩年の活躍と長寿
迫害と論争にさらされながらも、ホッブズの知的活動は衰えませんでした。80代という驚くべき高齢になってもなお旺盛に著作活動を続け、1670年代には80代でホメロスの『イリアス』と『オデュッセイア』の英訳を完成させるという偉業を成し遂げました。
1679年12月4日、ホッブズはデヴォンシャー伯爵家の屋敷で91歳という当時としては驚異的な長寿を全うして亡くなりました。戦争と恐怖の時代を生き抜き、その体験から人間社会の本質を問い続けたホッブズの思想は、現代民主主義の礎となっています。
4. 虎杖悠仁とホッブズ
こうしてホッブズの生涯を振り返ると、『呪術廻戦』の虎杖悠仁と重なる部分が見えてきます。
ホッブズは内戦という「自然状態」を目の当たりにしながら、それでも「人間は社会契約によって平和を作れる」と信じ続けました。虎杖もまた、死滅回游という自然状態の中で、仲間と小さな社会契約を結びながら戦い続けています。
そして虎杖の「部品になりたい」という言葉。英雄一人に頼る脆さを本能的に感じ取り、自ら制度の一部になろうとするその姿勢は、ホッブズが説いた「真の秩序は一人の英雄ではなく、制度と法によって支えられるべきだ」という思想と、驚くほど一致しています。
大切な人を何人も失いながら、それでも前を向き続ける虎杖悠仁の強さは、まさにホッブズが生涯をかけて証明しようとした「人間の可能性」そのものではないでしょうか。
まとめ
アニメというエンターテインメントの中にも、深く考えさせられる哲学的なテーマが隠されています。
虎杖悠仁の「部品」という言葉は、現代を生きる私たちに「社会の中で自分はどう在るべきか」という問いを投げかけてくれているようです。
正直、私は今まで「部品」であることは良くないことのように感じて生きてきましたが、虎杖くんの言葉で「はっ!」とした思いになりました。
そしてこのホッブズの政治哲学を知ると、国家のトップたち、政治家たちを見る目も少し変わりました。
政治や政治家に文句ばかり言ってましたが、自分たちが国家というリヴァイアサンに守られていることも忘れてはいけないと感じたのです。
このリヴァイアサンがなければ、私たちは「自然状態」に投げ出されてしまうのですから。
政治に対して批判をする時、この事を常に頭に置いておかねばならない。
今回の動画は制作している私自身もとても勉強になりました。
アニメからこれだけの哲学を学べるなんて、「いやぁーアニメってほんとにいいものですね!」淀川長治風(笑)
では、またお会いしましょう!(さよなら、さよなら、さよなら)
動画では、より視覚的に分かりやすくこのテーマを解説しています。
まだご覧になっていない方は、ぜひチェックしてみてください。
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©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会


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